長雨のあとに届く傘と、道具の「めぐり」

長雨が続いた季節が過ぎると、私たちの元には「骨が折れてしまった」「まだ使いたいので直せますか」といったご相談が数多く届きます。思い入れのある一本を大切に使い続けようとしてくださるお気持ちは、傘の設計や生産に携わる者として心からありがたく感じます。
しかし、現代の傘の生産構造において、修理には往復の配送費や専用パーツ代、手作業による人件費がかかり、メーカーとしては収益を出すことが難しいという現実もあります。
修理に潜むパーツの規格と構造
「他社ブランドの傘を直してほしい」というご相談をいただくこともありますが、他社製品の修理はお断りせざるを得ません。
理由は、傘を構成するパーツの規格がメーカーや製品ごとに異なるためです。傘はシンプルな構造に見えますが、親骨や受骨の太さ、関節部分である「ダボ」の形状、中央を貫く「中棒(シャフト)」のサイズなど、それぞれ独自の仕様があります。規格の異なるパーツを無理に継ぎ接ぎすると、開閉のバランスが崩れ、本来の強度が保てなくなってしまうのです。
自社製品の修理をお受けするのは、ご愛用への感謝とともに、傷んだ箇所を直接確認することが次の設計において耐久性を高める貴重な知見になるからです。
骨のグラつきと、撥水性の低下
傘を安全に使い続けるためには、構造上の耐用年数を把握しておくことも大切です。丁寧にお使いいただいていても、ひとつの目安となるのが「約3年」という期間です。
長く使い続ける中で、傘には明確な劣化のサインが現れます。ひとつは「骨全体のグラつき」です。繰り返しの開閉や風の負荷を直接受けることで、骨の関節部分にわずかな遊びが生じ、全体の剛性が落ちていきます。もうひとつは「生地表面の撥水性の低下」です。雨や摩擦などの影響で少しずつ水弾きが弱まっていきます。
この2つのサインが現れた状態は、一部を直しても別の部分に負担がかかりやすく、傘全体の耐用年数が近づいていることを示しています。
道具を整え、雨や日差しを心地よく迎える
すべてを修理して長く使い続けることだけが、道具との良い関係とは限りません。小さな不具合はメンテナンスをしながら大切に使い、全体の寿命が近づいたら感謝を込めて次の新しい一本へ引き継ぐ。
手元にある日傘や雨傘の骨のグラつき、生地の撥水状態をたまに確認してみる。道具の状態を整える小さな習慣が、雨の日や日差しの強い日の移動を、より軽やかで心地よい時間へと変えてくれます。
