長雨の日に気づいた、傘ケースへの思い込みと設計の選択
撥水剤の変化が教えてくれた、傘とケースの関係
傘の企画や商品設計に長年携わってきた私は、ずっと「生地の撥水力さえ高ければ専用ケースは不要」と考えていました。表面の水滴をしっかり払うことができれば、そのままカバンに収納しても支障がないからです。
しかし、その前提を揺らす大きな変化がありました。環境負荷に配慮したPFAS(有機フッ素化合物)規制の流れです。従来の耐久性に優れた「C8」から、現在の主流である「C6」、そしてフッ素を一切使用しない環境配慮型の「C0」へと撥水剤の切り替えが進んでいます。
フッ素フリーの「C0」は地球環境に優しい反面、従来の撥水剤に比べると水のはじきを長期間保つことが難しい課題があります。生地の機能だけに頼るのではなく、濡れた折りたたみ傘をどう快適に持ち運ぶか。道具のあり方を見直したことが、吸水アンブレラケース の誕生につながりました。
重さを抑えた仕様と、使い手のこだわり
開発において最も重視したのは、毎日カバンに入れても負担にならない「軽さ(約50g)」です。過度な防水加工で生地が重く硬くなるのを避け、内側には速攻で水を吸い上げるマイクロファイバー、外側には耐水圧12,000mm以上の生地を採用しました。
当初、設計側の視点として「少し大きめの汎用サイズが1つあれば、どんな傘でも入って十分だろう」と考えていました。しかし、秋の長雨を通じて多くの方にお買い求めいただいたことで、お客様のリアルな声に触れることになります。
届いたのは「持ち運ぶなら自分の傘に過不足なくフィットさせたい」「ファスナーをぴったり閉めてスマートに使いたい」という思いでした。1つの汎用サイズで済ませるのはこちらの都合であり、使う方にとっては「自分の愛用品にぴったりの心地よさ」こそが大切だったのだと気づかされたのです。
雨の日の移動を、もっと快適に
濡れた傘の置き場所に頭を悩ませることなく、電車やお店でも周りに気兼ねなく過ごせること。道具の工夫によって日常の小さなストレスを解消できれば、雨の日の外出も少しだけ晴れやかな気持ちになります。
お客様からいただいたお声を励みに、現在は手持ちの傘に寄り添う新しいサイズ展開の設計を進めています。道具の奥深さを知ることで、雨の日もより軽やかに楽しんでいただければ幸いです。


