中棒に滲む油の正体。自動開閉傘が秘める、小さな機械仕掛け

購入したばかりの自動開閉傘を開いたとき、金属のシャフト(中棒)に薄く油が付着していて、不良品ではないかと不安に思われたことはないでしょうか。
肌や持ち物に触れる場所だからこそ気になるその油ですが、実は傘が快適に、そして長く動き続けるために欠かせない役割を担っています。

金属の摩耗とサビを防ぐ、内部の命綱

ワンタッチで瞬時に開き、ボタン一つで安全に収束する。あの小気味よい動作を生み出しているのは、中棒の内部に組み込まれた強力な金属バネです。強いテンションがかかる金属同士が擦れ合えば、摩擦によって部品が削れ、動作もぎこちなくなってしまいます。そこで不可欠になるのが潤滑油です。

雨水にさらされる傘の内部は湿気がこもりやすく、サビが大敵となります。潤滑油は金属表面を薄く覆うことでサビの発生を防ぎ、機構の寿命を延ばす防護膜として働いています。

ラジオのアンテナのように径の異なるパイプが重なり合って伸縮する構造上、動作に伴って微量の油が外側に押し出されるのは、内部の機構が正常に保護されている証でもあります。

撥水性を守る拭き取りと、冬のウォーミングアップ

中棒に油が滲んでいるのに気づいたら、ティッシュペーパーや柔らかい布で軽く拭き取ってください。その際、油がついた指先で傘生地に触れないよう注意が必要です。生地表面の撥水コーティングに油脂が付着すると、水を弾く力が低下したり、落ちにくいシミの原因になったりします。

また、寒さが厳しい冬場や、前回の雨から期間が空いたときは、油の粘度が高くなって動作が重く感じられることがあります。そんなときは出かける前に、暖かな室内に少し置き、周囲の安全を確かめながら2〜3回開閉を繰り返してみてください。冷えて偏っていた油が中棒全体に均等に馴染み、本来のスムーズな動きが蘇ります。

人と同じように道具にも事前の準備運動を取り入れることで、パーツの負荷を減らし、一本の傘をより長く愛用できます。一本の傘に組み込まれた小さな工夫を知ることは、道具への愛着を深め、雨の日の外出を心地よい時間へと変えてくれます。


アンベル株式会社 CEO

執筆者:辻野義宏

30年以上に渡って傘の開発および研究を続けている。革新的な機能を追求し続ける日本の傘ブランド「AMVEL (アンベル) 」では、時代によって変化するベストを追求し、最先端の技術を駆使した傘をお届けしています。