あえて手間をかける。「ポキポキ傘」に潜む究極の機能美

街で見かける傘と、プロが愛用する傘
展示会で来場者の方に折りたたみ傘をお渡しすると、時折り開閉の仕方に戸惑われることがあります。骨を一本ずつ手で折り伸ばす「ポキポキタイプ(ホック式)」の傘だからです。
現在の市場では、ろくろをスライドさせるだけで開閉できる「楽々開閉タイプ」が主流を占めています。しかし、傘の構造を熟知した設計者やプロの現場では、今もこの「ポキポキタイプ」が根強い支持を集めています。一見すると手間に思える構造ですが、なぜプロはあえてこの傘を選ぶのでしょうか。
無駄を削ぎ落とした構造が生む機能性
その答えは、メカニズムの圧倒的なシンプルさにあります。開閉に連動する複雑なジョイントやパーツを排除することで、道具としての本質的な強みが生まれます。
ひとつ目は、圧倒的な軽量化とスリムさです。パーツが少ない分だけ重さが削ぎ落とされ、巻きたたんだ際の太さもすっきりと収まります。バッグに常備しても負担にならず、軽快に持ち運ぶことができます。
二つ目は、「長いまま閉じられる」という隠れた利便性です。濡れた街中でサッと店舗に入る際、骨を折らずにシャフト(中棒)だけを短く縮めれば、長傘のような状態で一時的にまとめることができます。そのまま長傘用の傘袋に入れたり、一時置きしたりできる使い勝手の良さがあります。

三つ目は、風を受け流す柔軟性です。強風を受けた際、骨がしなやかに倒れ込むことで衝撃を吸収し、フレーム全体の破損を防ぐクッションの役割を果たします。
道具としての愛着を育む
手動で先親骨を固定する際、「ポキッ」という微かな手応えと音が手に伝わります。ワンアクションの便利さも魅力的ですが、ひとつひとつの動作に構造上の理由があり、限界まで削ぎ落とされた機能美には独特の味わいがあります。
軽さと耐久性を兼ね備えた傘をカバンに忍ばせ、雨の日も晴れの日も軽やかに移動する。そんなシンプルな道具の選び方が、日常のちょっとしたストレスを減らし、心地よい時間を増やしてくれます。次に折りたたみ傘を手にする機会があれば、ぜひ骨の動きとその設計思想に触れてみてください。
