
荷物を増やしたくない出張者のための、究極のスリム設計
ビジネスバッグの容量を奪い合う、傘選びの「相反する課題」
傘のスペシャリストとして30年以上活動する私にとって、出張時の雨具選びは常に悩みの種でした。肩までしっかり守れる大きな傘は安心ですが、収納時に太くなりバッグを圧迫します。一方で、コンパクトさを優先すればスーツの肩が濡れてしまう。この「サイズと携行性」という、これまでは両立が難しかった課題を解消し、雨がやんだ後もスマートに振る舞える傘を作りたい。それがALTERNA SLIM60の開発の原点でした。
「ダボ」の配置を見直し、重なりをずらすという発想
一般的な親骨60cmの傘は、収納時の厚みが50mmほどになります。これをいかに削るか。私が着目したのは、傘骨の関節部分である「ダボ」の重なりです。通常の構造ではダボ同士が干渉し、外側に膨らんでしまいます。そこで、傘骨の一部を平行に配置し、あえて重なりをずらす特殊な構造を設計しました。ミリ単位の調整を繰り返し、実用新案登録済みのスリム構造を確立。これにより、直径約106cmという広さを持ちながら、厚さわずか35mmという、システム手帳並みのスリムさを実現したのです。
162gの軽さに秘められた、妥協なきスペック
単に薄いだけではありません。生地にはストッキング並みに細い15デニールの糸を使用し、1インチ四方に407本という高密度で織り上げました。これにより、約162gという軽さと、一般的な基準を上回る耐水性を両立させています。さらに、アルミニウムとグラスファイバーを組み合わせたフレームは、風速15m/sの耐風試験もクリア。環境に配慮したPFOAフリーの撥水加工「Easy-Dry」も、道具として長く愛用していただくための私のこだわりです。
雨の日さえも、スマートにこなす大人たちへ
雨がやんだ後、濡れた大きな傘をカバンの隙間にスッと収める。その瞬間の心地よさをぜひ体感してください。この傘は、単なる雨具ではなく、使う人の所作を美しく変える「ガジェット」だと自負しています。出張や移動の多い方の日常に、私たちの技術が少しでもゆとりをもたらすことができれば、開発者としてこれ以上の喜びはありません。